最終日、ぎりぎりのぎりぎり（恒例行事）で間に合った。
会期も長いしそのうち行けると余裕に思っていたのに、コロナ禍もあり本当にタイミングが合わない。
そして会期途中の訃報。ご冥福をお祈り申し上げます。
実物を目にして、表面にあんなにも柔らかで繊細なろくろ目があることに感動してしまった。
自分の中ではずっと、あの白さやミニマルな佇まいが先行していて、一見すると同じような白磁の作品にそれぞれ唯一無二な存在感（かつ有機的な）があるなんて、実物を観ることがなければ知ることがなかっただろうと思う。
それぞれが唯一無二、だなんて当たり前のことなんだろうけれども。
そんな当たり前のことを忘れさせ、かつ思い知らされるような、極限までそぎ落とされたことによって浮かび上がる個性、本質、のようなもの。
何を語っているのかと自分でもおかしくなるけれど、いや、あんなすごい作品たちを観たら語りたくもなるってもの。語らせて…
大阪市立東洋陶磁器美術館 特別展「黒田泰蔵」
令和2年11月21日(土)～令和3年7月25日(日)
まず目に飛び込んできた、「壺」。
曲線、バランス、色、かたち、影。陳腐な表現しかできないけれど、すべてが美しい。
いろんな形の「鉢」。
「割皿台」。
この割れ目はすごい。ブラックホールのような、黒が現れることによって広がるもの。
そして、重心が上にあることでこの作品自体が浮いているようにも見えてきたりする。
いくつも展示されている「円筒」。
実物は縦横10cmほどの大きさなのだけれど、なんだろう、その大きさ（というか小ささ？）以上に存在感がすごい。
びっくりするぐらい薄くて繊細で、これをろくろでつくりあげる、という行為の緊張感が作品からびしびし伝わてってくるよう。
でもじっくり観ていると、その緊張感がほどけてきて、ずっと観ていたくなるような心地よさに変っていく感じ。
黒田泰蔵について、リンク先の特集ページがとても興味深く面白かった。
Casa 無二の”白磁”を生んだ【陶芸家・黒田泰蔵】を知る10のこと。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
そして今回こちらも楽しみにしていた柿右衛門の展示。
「カワイイ」柿右衛門、ものすごくそそられるじゃあないですか！
大阪市立東洋陶磁器美術館 特集展「柿右衛門―Yumeuzurasセレクション」
令和2年11月21日(土)～令和3年7月25日(日)
「色絵 梅鶉文 輪花小皿」（いろえ うめうずらもん りんかこざら）
これがもうかわいいのなんの。心が躍るような華やかさ。このうずらが笑っているような表情をしていてたまらない。
「色絵 双鶴文 輪花皿」（いろえ そうかくもん りんかざら）
かわいい足がついた輪花皿。柿右衛門様式って本当に繊細で美しい筆致だな…
当時、ヨーロッパで大流行するのも分かるし、今でも当然美しい。普遍的な美だなあと思う。
「色絵 七宝繋文 四方向付（5客）」（いろえ しっぽうつなぎもん よほうむこうづけ）
こちらはモダンさも感じる向付。シンプルにおしゃれ。
あまりにかわいくておしゃれな作品ばかりで、思わず図録を買ってしまう。
まさに目の保養。こんな作品が家にある（保管庫か）なんて、どんな感覚なんだろう。
コレクターさんのカワイイ柿右衛門への愛情がたっぷり詰まった素敵な展覧会でした。
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
帰りは美術館帰りの定番コース、天満橋の「土山人」でランチ。
トマト愛激しい娘は冷たいトマト蕎麦、私は田舎蕎麦。
季節の野菜天ぷらや鱧とじゅんさいの冷菜、外でいただける生ビールや冷酒、至福。
8月半ばから始まる企画展もまた気になるので、今度こそ早めに予定をしっかり立てて行こうと思う。
その会期後は改修工事のため長期休館になるそう。
行かれたことがない方は、休館前にぜひ。