2020年錦秋文楽公演『本朝廿四考』@国立文楽劇場

2020年錦秋文楽公演のガイドブック

錦秋公演は3部公演になっています。もともと長時間外出できないうえ外出自体も控えているため、2部と3部は同日観劇することにしました。連続で観たのは初めてだったけれど、案外疲れもなく。どっぷりと文楽の世界にひたれたぜいたくな1日でした。

◆『本朝廿四考』(ほんちょうにじゅうしこう)

道行似合いの女夫丸(みちゆきにあいのみょうとがん)
景勝上使の段(かげかつじょうしのだん)
鉄砲渡しの段(てっぽうわたしのだん)
十種香の段(じゅしゅこうのだん)
奥庭狐火の段(おくにわきつねびのだん)

甲斐の武田と越後の長尾(上杉)両家の不和の原因は、長尾謙信が武田家の家宝・諏訪法性(すわほっしょう)の兜を借りて返さないことにありました。両家の和睦を願い武田信玄の嫡男勝頼(かつより)と謙信の娘八重垣姫(やえがきひめ)の縁組が足利将軍から提案されますが、祝言の前に足利義晴公は暗殺されてしまいます。嫌疑をかけられた両家はそれぞれの嫡子である勝頼、景勝(かげかつ)の首を差し出して潔白を証明しようと、将軍の三年忌を待って信玄は勝頼の首を差し出しますが、それは身代わりの首で、犯人捜しの間に切腹した勝頼の身代わりに連れてこられた百姓の簑作(みのさく)こそが信玄の子であり、勝頼は、取替え子を企んだ家老板垣兵部(いたがきひょうぶ)の実子でありました。板垣は諏訪法性の兜を取り戻し、勝頼が父の板垣と一味でないことを証明するようにと、勝頼と夫婦の仲を許された腰元濡衣(ぬれぎぬ)に託します。簑作は、将軍暗殺の犯人を捜し出した暁には勝頼として戻ると告げ、濡衣とともに信濃へと旅立つのでした。

夫の勝頼を亡くしたばかりの濡衣は、簑作とともに夫婦の薬売りに身をやつし、謙信の館を目指します。二人で信濃路を進みながら、濡衣は亡き夫を思い浮かべ、思いを募らせるのでした。(道行似合いの女夫丸)

簑作は花作り、濡衣は腰元として謙信の館に潜り込みました。足利家の上使として現れた景勝は父に対し、将軍暗殺の嫌疑を晴らすため、自身の首を差し出すよう促します。当惑する謙信は花守り関兵衛(せきべえ)の景勝助命の提案に乗って花作りの簑作を呼び出します。亡き勝頼に瓜二つである簑作を見て謙信は驚きますが、関兵衛の勧めで簑作を召し抱え、塩尻へと向かいます。(景勝上使の段)

簑作が勝頼だと気づいた謙信は関兵衛(実は斎藤道三)の器量を見込み、将軍暗殺に使用された鉄砲を渡し、鉄砲の使い方を知る犯人を捜すよう命じます。(鉄砲渡しの段)

勝頼切腹を聞いた八重垣姫は、勝頼の絵姿に向かい香を焚く日々を送っていました。絵姿に瓜二つの簑作が現れたことに心を動かされた姫は、濡衣に簑作との恋の仲立ちを頼みます。濡衣はかわりに諏訪法性の兜を盗み出すことを求めたため、姫は簑作が勝頼だと確信し、自害を覚悟で縋る姫についに簑作も自分が勝頼であると明かします。喜びもつかの間、勝頼は謙信から召集を受け塩尻へ向かい、すぐさま謙信が勝頼に討手を差し向けたため姫は勝頼の命乞いをしますが聞き入れられません。(十種香の段)

八重垣姫は追手より先回りして勝頼に命の危機を知らせようとし、兜に祈願して諏訪明神に勝頼の窮地を救うよう願います。すると諏訪明神の使いである白狐が現れ、その力に守られながら氷張る諏訪湖を渡り、勝頼のもとへと急ぐのでした。(奥庭狐火の段)

久松半二らによる時代物。人物も多いし入れ替わっているしで内容を理解するのに何度も読みなおしたものの、まだえっとこれは誰だったっけ、となる状態です。名前を覚えるだけで大変。

実は、道行ってそれほど好きではなかった。が、この道行がものすごくよくって、なにがと言えばやっぱり床とお囃子が好きでした。最初からぐっとわしづかみされたような感覚。濡衣と簑作(本当の勝頼)、とくに濡衣の心中の複雑さですよね。濡衣の勝頼はもう自害してしまっているのに簑作にその面影を追ってしまう、というやりきれなさ。

あとはもう奥庭狐火の段での勘十郎さんオンステージという感じでした。最後は左遣いも足遣いも出遣いになるのですが、足遣いの勘昇さんがめちゃくちゃがんばっておられて(勘十郎さんの八重垣姫というか狐がめちゃくちゃアグレッシブなので)ひたすら追ってしまった。それにしてもここはなぜ全員出遣いなのだろう。

 

2020年錦秋文楽公演のチラシ2

 

ふさっとした白い毛が施された兜をもつ八重垣姫。通力を得てからがらっと変わる姫の様子は見ごたえがありました。

織さんの「アヽ翅(つばさ)が欲しい、羽根が欲しい。飛んで行きたい。知らせたい。逢ひたい、見たい」(勝頼の暗殺計画を知った八重垣姫のせりふ)がしみじみよかったなあ。胸を打ちました。これ名台詞ですよね… 文字数、リズム、完璧な流れに思う。最後が「見たい」なのがすごいなあと。その姿をひとめ見たいというのが究極の願いなんですよね。シンプルかつ実に深い言葉。

 

正起屋の焼鳥

 

2部と3部の間は1時間と少しあったので、なんばウォークの「正起屋」でちょっと一杯。ここの焼き鳥が好きで、たまにお土産に買って帰ります。店内で食べるのは初めて。カウンター1席ずつパネルで仕切られていて一人でも気軽に入れます。焼き立ての焼き鳥、おいしかった。

 

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