2019年 夏休み文楽特別公演 第一部 親子劇場『日高川入相花王』『かみなり太鼓』@国立文楽劇場

2019年文楽親子劇場での幕

初日に張り切って観劇してまいりました夏休み文楽親子劇場。観劇後、「楽しかったー!」と娘が思わず言うほど、こどもも大人も楽しい夏休みにぴったりの素晴らしい公演でした。

◆日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)

渡し場の段(わたしばのだん)

清姫が好きになった安珍は道成寺に逃げてしまいます。道成寺は日高川で船に乗らなければなりませんが、船頭は清姫を乗せてくれません。どうしても安珍を追いかけたい清姫は川へ飛び込みます…。清姫の顔が変わる仕掛けや一瞬で衣装を替えることなど、人形芝居ならではの魅力いっぱいのお芝居です。(チラシより)

◆解説 文楽ってなあに

◆かみなり太鼓

小佐田定雄 作
鶴澤清介 作曲
桐竹勘十郎 演出
望月太明藏 作調

もうすぐ天神祭りという暑い日、寅ちゃん家に雷さんのトロ吉が落ちてきました。どうやら太鼓を打つのが下手なトロ吉が、雲に乗って太鼓を練習している時に、寅ちゃんのお母さんの大きな声に驚いて落ちてきてしまったというのです。寅ちゃんの家は太鼓屋さんなので太鼓がいっぱい。そこで雲の上に帰るため、一緒に練習することになりましたが…ある夏の日に起きたトロ吉と寅ちゃん家族のお話です。(チラシより)

 

【お得情報】2019年 夏休み文楽親子劇場 優待

 

大阪市のお得な優待については以前書かせていただきました。私たちは中心ブロックの5列目で鑑賞。娘ぐらいの身長(小学校1年生)のこどもには映画館に置いてある高さ調節のクッションをお借りすることができ、さらに見やすかったよう。
開演前には資料展示室でお人形を観たり、日替わりで実際に技芸員さんになる体験ができるステージもあります。娘は恥ずかしがってできないタイプなので見ているだけだったけれど、こどもたちがきちんと並んで人形を持って写真撮影していました。みんなすごくお行儀がよくてびっくり。そもそも親子劇場とはいえ文楽、どれぐらいの親子連れが観劇に来るのだろうか、と思っていたら大盛況で。ファンとしてすごくうれしかったです。ロビーでもお人形と玉路(たまみち)さん、清之助(せいのすけ)さんと一緒に写真を取ることができ、これだけは娘の意向を一切無視して撮らせていただき母は満足しました。このお人形がまた「いらっしゃい♡」と言ってくれているかのようなやさしいお顔なんですよ。

まずは清姫の変化が見どころの『日高川入相花王 渡し場の段』。清姫のかしらは「角出しのガブ」という特殊なもので、一瞬で姫の顔が鬼になります。安珍へのこじらせた恋心が恨みと嫉妬に変わり、蛇の体になって日高川を泳いでいく清姫。義太夫節が難しかったとしても、船頭のコミカルさ、清姫のかわいさと恐ろしさ、演出のダイナミックさ、と視覚的に興味深い部分が多くこどもにもおもしろかったのではと思います。文楽の演目は親・子殺しとか切腹とかこども向けでないものがなかなか多いので、あらすじ説明が大変ではなくまだよかった。

解説は玉翔(たましょう)さん。初日だというのに開始すぐの自己紹介で笑いを取り、こなれた進行で観客をつかんでいかれます。人形遣いさんって物静かそうに見えるのに(黙って遣うんだからそう見えるのはもっともだけれど)、おもしろくておしゃべり上手な方が多くてすごい。ここでもこどもが挙手して実際に三人遣いを体験するコーナーがあったのですが、たくさんのこどもがはいはいー!と元気に手を挙げていて私はそれだけで感動してしまった。うちの娘は例のごとく絶対に手を上げませんが、同じぐらいの年齢の子たちが舞台で教えてもらいながら遣っている様子に目を輝かせていました。遣ってみたい気持ち、ないわけないんだもんね…。三人ともすごくしっかりと自分の名前を言い、遣った感想を言い、自分があの子たちの親だったら泣いてるなと思う。なんだろう、文楽を観に来たのか、きらきらしたこどもたちを観に来たのかよく分からなくなりました、笑。

私も楽しみにしていた『かみなり太鼓』。めちゃくちゃおもしろかったです!しょぼい雷様、おへそ、おかあちゃんの怒りの雷、おとうちゃんのふんどし姿、とこどもが大好きなモチーフがいっぱい、こどもたち大ウケ。大阪人にとっては馴染み深い天神祭という夏の祭事も絡められ、笑いがいっぱいの楽しい作品でした。義太夫節は現代風大阪弁になっていて聴きやすく理解しやすく。作者の小佐田定雄さんは、落語をはじめ上方芸能に新作を提供されている落語作家さんだそうでおもしろいはずだと。調べてみると奥様かつお弟子さんは文楽のつどいで司会をしてらしたくまざわあかねさんだそう。また、おかあちゃんが怒るとこわい、という設定は落語の『船弁慶』に登場する”雷のお松”というあだ名の気の強い女房を意識したもので、叱るのと雷を落とすのを掛けているそう。

 

小佐田定雄さんの初演時のインタビュー
「笑い」の文楽

 

小道具や演出も素晴らしくて、冒頭のすいかからたくさんの太鼓、ラストの天神祭の花火まで目が離せません。この花火は、江戸後期に大坂で流行した”錦影絵”という技法を用いられているそうで、語りや音に合わせて風呂と呼ばれる幻灯機で人物や背景を和紙スクリーンに映し出すもの。さらに玉佳(たまか)さんが客席上をトロ吉と宙乗りという大がかりな演出まで!こどもも大人も前を観たり上を見上げたりと大忙し。
それから友人たちとも話していたのが三味線のかっこよさ!普段の三味線とはまた違うモダンさもある三味線、これだけでももう一度聴きたいぐらい。冒頭の「あつい、あついぞ」で笑いを取りつつ惹きつけた織太夫さん、こういう物語にぴったり。思わず空調の効いた室内で暑さを思い出すような(でも今回は汗はかかれていなかった)。ぴったりと言えば寅ちゃんの碩太夫(ひろたゆう)さん。若くて張りのあるお声が無垢な寅ちゃんでした。その寅ちゃんは勘次郎さん、雷落としまくりのおかあちゃんは簑紫郎さん、気前のいいおとうちゃんは紋秀(もんひで)さん。人形遣いさんは黒衣でした。最後、宙乗りで去って行く玉佳さんとトロ吉がほんわかかわいくて、宙乗りすごーい!というより和む。しかもお菓子か飴かをばらまきながら。すち子かっていう、笑。そこだけ玉佳さんお顔出しです。最高でした。

 

2019年文楽親子劇場でもらったもの

 

記念品として、今回のチラシのイラストを使ったばんそうこうをいただきました。めっちゃかわいいです!上のファイルは、大阪市に在住、在学する小学生が対象で夏休みにメトロやシティバスを無料で乗車できる「おでかけキッズサマーパス」を持っていくともらえるもの。文楽のつどいで私がいただいたものと同じものです。終演後はお人形がお見送りもしてくれて(もちろん一緒に撮影可)おみやげまでいただき、至れり尽くせりです。ぜひ気楽にたくさんの人に観てほしい。300年の歴史と伝統を大切に受け継ぎながらもこんなに素晴らしい現代的娯楽になるのだという、文楽の懐の広さを知りました。夏の恒例行事としてこれからも末永く続いてくれること、たくさんのこどもたちが観に行ってくれることを願ってやみません。

さてこれだけでも親子ともに大満足だった親子劇場ですが、まだ続きがあるのです。技芸員さんに顔がきく友人のおかげで、なんと一部終演後の舞台裏見学ができることに!しかもその技芸員さんがご案内してくださるという。こどもそっちのけで大人が大興奮。二部の準備もありバタバタされている中ご案内していただき、ありがたいやら恐縮するやら。お二人に感謝でいっぱいです。

 

国立文楽劇場の舞台裏

 

写真を撮るのがはばかられたので1枚だけ。舞台の奥行が想像以上にあって驚いた。舞台セットが前後で置けるほど奥行きがあります。舞台に立つとびっくりするぐらい座席がよく見えて、こりゃスヤってたらすぐ分かるなと思いました。太夫さんの見台も近くで見るとそれぞれ色や細工が異なっていて、今度からはそれもしっかり見たいなと思う。小道具や大道具はものすごくこだわり抜かれて作られていて、今までは技芸員さんやおはやしの方々しか意識していなかったけれど貴重なお話と舞台裏見学とで視点が広がり、さらに充実した観劇ができそうです。
娘は楽屋前に並んでいるお人形で一人遣いのものを持たせていただきました。写真を撮ったのだけれど、緊張とうれしさと恥ずかしさですごい顔でした、笑。でも貴重ないい思い出になったはず。というか私が娘になりたかったわ…。

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