2019年。世界に3つしかなくその3つともが日本で所蔵され国宝に指定されている「曜変天目」が、ほぼ同時期に3か所で公開されるという、もしかしたら自分が生きているうちに二度とない奇跡のような年でもありました。
それぞれ東京、滋賀、奈良での開催。休日に娘を連れて奈良国立博物館へ行きました。たったひとつのお茶碗の放つ圧倒的な存在感と無限に広がっていく暗い宇宙のなかの輝き。本物を見ることができた感動で興奮と震えがとまらなかったことは、きっと一生忘れられない記憶。
天目茶碗とは、中国の天目山一帯の寺院で使われていた天目山産の茶道具で、天目釉と呼ばれる鉄釉をかけて焼かれた陶器製の茶碗のこと。中国南宋時代(12-13世紀)に、福建省の建窯(けんよう)で焼かれた天目茶碗は建盞(けんさん)と呼ばれ、曜変天目(耀変天目)は窯内で偶然に美しい結晶が生じたうつわであり、唐物全盛の室町時代には、茶碗の中で最高峰に位置付けられたそう。そんな天目茶碗のひとつ、「油滴天目」が現在大阪市立東洋陶磁美術館鑑賞できるのです。
先日、北浜から天満橋まで秋の中之島を散歩がてらにその天目茶碗を見に行ってきました。延期になっていた特別展「天目茶碗の美」が6月2日(火)から11月8日(日)までと会期を延長して開催されるということで、涼しくなったら行こうと楽しみにしていたのです。
日曜日だというのに館内はお客様は少な目で、ゆっくりゆったり見ることができました。この美術館はいつもだいたい空いているような気もする…建物も雰囲気も素敵で私は好きな美術館です。
国宝、油滴天目。
そうなんです、なんと撮影(もちろんフラッシュは×)OKなのです。すごくないですか?
私のこんな写真では美しさも素晴らしさももろもろすべてがまったくもって伝わらないことを承知でアップ。言葉なんていらないです。
免震台が仕込まれた回転台に載せられていて、360度からうつわを見ることができます。
館内はいくつかの展示室に分かれていて、特集展として「現代の天目-伝統と想像」という展示があり、こちらがまた非常に興味深かったです。現代の作家の方々が天目の再現や新たな創造をもってつくりあげた作品を見ることができるのです。
見立漆器 曜変天目
彦十蒔絵・若宮隆志
私でもお名前を聞いたことがある若宮隆志さんの作品。漆器とは思えない再現度の高さ。それでいて持ったら軽く、漆器の質感なんだろうなあ。
IRIDESCENT TENMOKU
ジャン・ジレル
フランスで唯一、陶芸の人間国宝に認定されているフランスを代表する陶芸家の方の初公開の作品。「iridescent」とは「虹色の、玉虫色の」という意味だそうで、ひと目見たときにその青い色にはっとさせられました。
曜々盞
九代 長江惣吉
親子二代で天目の「再現」に取り組んで研究されておられるそう。特集展ではこの作品が一番魅せられてしまいました。天目を再現しながらもモダンさもあり、色合いの移り変わりに親子の夢のそのさきが浮かんでくるような、そんなロマンまで感じる作品でした。
これは宋時代の花瓶なのですが、なんとなく今までの写真と光の加減が違うのが分かりますでしょうか。この美術館には自然採光による展示室があり、本来のたたずまいを感じることができるのです。ほかの展示室と比べて明るさは落ちるけれども、なんとも趣があっていい感じ。
来期は黒田泰蔵展ということで、楽しみができました。また行こうと思います。
美術館でたっぷり楽しんだあと、バラ園を歩きながら天満橋方面へ向かいました。見ごろを迎えているバラがたくさんあって、少しマスクを外して近づくとバラのいい香りが。マスクなしで香りを楽しめたらなあどれだけいいことか。
バーベキューができるレストランもあり、こちらは休日の賑わいでした。去年の秋はここで自然派ワインのフェスに参加して楽しかったなあ。
遅めの昼食は天満橋シティモールに入っている「天満橋土山人」へ。ちょうど新そばが出ていました。
こちらの蛸のやわらか煮が好きでいつも頼んでしまう。その名のとおりすごくやわらか。新そばは香りよく、わさびと塩で食べると一層おいしい。
娘はとろろそばを完食したうえ、ポタージュみたいに濃厚なそば湯(私の分)まで飲んでいた。分かってはいたけれど本当におそばが好きなんだろうな…